森の樹木図鑑

樹木についての知識がたっぷり。
身近な木や、住まいの地域にぴったりの木を探せます。

スギ (杉)

スギ科

日本人に最も親しみ深く、木と言えば真っ先にその名が浮かぶのがスギ(杉)。学名がCryptomeria japonicaと言われるように、日本固有の樹木です。語源はまっすぐ伸びると言う意味の「直ぐなる木」からきているといわれ、枝下が長く枝が細いので、長いまっすぐな材が取りやすい木です。「日本書記」の中には須佐之命(スサノオノミコト)が「杉と楠は船材に」と語ったという記述があり、古くから造船にも使われてきました。早材と晩材の差は明瞭で硬さにも差があるため、日が経つうちに柔らかい早材が落ち込む傾向があり、表面に小さな段差ができてきます。また、独特の芳香があるので、菓子箱や酒樽にも使われています。
現在、人工林の約40%は杉が植林されており、戦後に植林された杉が伐採期を迎えて今後大量に出材されてくる可能性があります。輸入材との競合では杉には不利な面もありますが、杉の乾燥方法などをさらに工夫して付加価値の高いものにすれば、需要は増えてくると思われます。
ちなみに、柱材がとれるには樹齢40~50年、赤無地の造作材ならば100年、銘木級の天井板となると250~300年の歳月が必要です。めったに採れない杉の幅広物の天井板などを住まいに使うことは、昔の人にとってもステイタス・シンボルだったのです。




【材質】


杉は通常、造林木よりも天然木の方が材質が優れているとされる。造林木は産地ごとの造林方法や品種の違いによってさまざまな個性が見られるが、一般に幹がまっすぐで材も柔らかく加工しやすい。辺材と心材との差も極めて明瞭で、辺材は白く、心材は淡い赤から赤褐色まで。ときどき黒褐色のものもあり、乾燥が非常に難しいため、クロジン(黒心)と呼ばれて嫌われている。ただし、黒心材は硬く腐りにくいとのことから、九州の一部の地域では土台に使用することもあったようである。辺材と心材(赤身)が混じっている部分は、赤白色とのことで源平と呼ばれている。


【生育地】


土質を選ばないため、北海道南部以南ならどこでも育つ。太平洋側のものをオモテスギ、日本海側のものをウラスギといい、国有林で主に採れる天然木と、民有林で育てられる造林木に分かれる。天然木では秋田スギ、春日スギ、屋久スギなどが有名。スギは日本での造林面積が最も広く、近年出回っているのはほとんどが造林木である。造林地として有名なのは奈良県吉野、三重県尾鷲、静岡県天竜川筋、大分県日田、宮崎県飫肥、鳥取県智頭などで、とくに吉野産は良材として知られる。台湾で造林されているものは、日本から入ったスギ(特に吉野スギ)が多い。


【住まいでの用途】


用途は実に広く、柱を始め梁・母屋・桁・垂木・貫・下地板等の構造関係。さらに、障子や襖・雨戸等の建具類。天井板、外壁、床材等ほとんどの用途に使用できる。

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