森の図書室

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森と環境

シカが食べない木

近年、全国各地の山里からニホンジカによる被害の報告が急増しています。

森を育てるために植林した苗木や、長い年月をかけて育てた木の枝葉や樹皮がニホンジカに食べられたり、剥がされ、時には食べ物を探して里に下りて田んぼや果樹園、ワサビ田などの農作物を食い荒らしているというのです。

その背景には、天敵(てんてき)のオオカミの絶滅(ぜつめつ)やわが国の林業衰退(りんぎょうすいたい)などさまざまな要因が考えられますが、ニホンジカにとってはエサを探し求めてたどり着いたら、人間が育てた森林や農地だった、というところでしょうか。

ニホンジカは、1日1頭当たり3キロもの量を食べる大食漢(だいしょくかん)。あらゆる草木を食べ尽くすかのように思われるニホンジカですが、彼らが食べない木もあります。

たとえば、アセビ。アセビは漢字で「馬酔木」と書くのですが、葉を食べれば酒に酔ったような状態になることからあてられた字で、有害な植物のため食べません。

奈良公園では、シカは食べられる草木ばかりを選び、その結果アセビが残り群生が見られています。

シカが食べない木は、他にナンキンハゼ、イヌガシ、カゴノキ、ナギ、ヤブニッケイ、レンゲツツジなど、草ではウラジロ、イワヒメワラビ、イアザミ、イラクサなどで、これらは草木が有毒物質を持っていたり、また、動物が好まない忌避物質(きひぶっしつ)があるために、どんなに飢えていても食べることはありません。

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