森の図書室

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森と歴史

山椒と日本人。

「夏の土用の丑の日」。この日に鰻を食べると夏バテ防止に効果があるとされ、鰻屋の店先に列をつくる様子が夏の風物詩になっています。

鰻料理といえば、欠かせないのが粉山椒。ピリッとした刺激とともに、よい香りが鰻の風味をいっそう引き立てる粉山椒は、ミカン科の落葉低木である「山椒」の熟した実の皮を乾燥させて粉状したものです。

鰻には疲労回復や滋養強壮に役立つビタミンA、E、B1を多く含んでいるので、夏を乗り切るには最適な食べ物なのですが、川魚特有の臭みや脂っこさが気になることもあります。そこで粉山椒を振りかけると、ミカン科らしい爽やかな柑橘系のほのかな香りが臭みを和らげ、さらにサンショールというピリッとした辛み成分の食欲増進・解毒作用が胃腸への負担を少なくするのです。山椒は粉山椒のほかにも、若芽、葉、花、実なども香辛料として使われ、捨てる所がないほどです。

たとえば吸い物に浮かべるなど料理の彩りや、和え物にして香りを楽しむには、鮮やかな緑の若芽や若葉(木の芽)を。ちなみに京都のお土産品でも知られる「ちりめん山椒」は、未熟な実にシラスを加えた佃煮です。そして、硬い幹や枝は「擂り粉木(すりこぎ)」として高級品として扱われているそうです。そんな食べ物としても道具としても有用な山椒ですが、縄文時代の遺跡から出土した土器に山椒の実が付着していたとか。山椒はずっと昔から日本人の食生活に深く根付いていたのですね。

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