森の図書室
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森と歴史
人に役立つ南天。
晩秋から冬の間、丸い小粒の真っ赤な実を房状につける「南天(ナンテン)」。言葉の響きが「難を転じる」に通じることから、古くから縁起木として玄関先や庭に植えられ愛されてきました。
ナンテンは縁起がよいだけでなく、私たちの健康を守ってくれています。生薬の「南天実(なんてんじつ)」は赤い実を乾燥させたもので鎮咳、解熱効果があり、古くから煎じて服用してきました。赤い実に含まれる成分「ナンテニン」に、気管の筋肉を弛緩させる働きがあるとされています。身近なところで、咳止めの飴に用いられていますね。
また、葉には「ナンジニン」を含み、この成分は熱と水分によって「チアン水素」を発生させます。本来猛毒成分ですが、葉に含まれている程度では微量なので、逆に防腐作用を発揮します。いまは少なくなりましたが、お節句や七五三、誕生日などのお祝いにはお赤飯を炊き、ご近所に配ったものです。そんな時には、彩りのよい縁起物としてお赤飯の上にナンテンの葉を添えていました。炊き立てのお赤飯の熱と水分によって発生した、微量の「チアン水素」による防腐効果も期待されていたのですね。縁起がよくて薬にもなる、ナンテンには人に役立つパワーがギュッと詰まっています。