森の図書室

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森と歴史

イチョウの木が絶滅の危機!?

紅葉の季節になると、黄金色の葉が美しいイチョウの木をよく見かけます。しかし実はイチョウは「野生絶滅種」に指定されています。普段、目にすることの多いイチョウが、なぜ「絶滅種」なのでしょうか。

イチョウが初めて地球上に現れたのは約3億年前とされ、世界中に広まったのは、約1億9500万年前から約1億3500万年前まで続いた中生代ジュラ紀であることが化石から判明しています。

ジュラ紀といえば、恐竜が栄えた時期。皮がついたままでは発芽しないイチョウは、恐竜に皮を食べられ、その糞と一緒に種だけが残ることで繁栄できたのです。しかし、今から1万年前まで続いた長い氷河期によって、イチョウは絶滅の危機に瀕することになります。

冷たく厳しい気候の変化に耐えられず、ジュラ紀には17種も存在していたイチョウの仲間は、この時代にほとんどが絶滅。生き延びたのは、氷河期にも比較的温暖だった中国大陸に残った1種のみでした。

絶滅を免れたイチョウはその後、人知れずひっそりと中国大陸で生き続けていましたが、中国が宋の時代(西暦960〜1279年)になり、人々に発見されました。そして、薬用や食用としての価値を見いだされ、栽培されるようになって中国全土に広まったのです。

さらに、日本には鎌倉時代にイチョウが伝わったとされており、古いイチョウが日本の寺院に多くみられることから、持ち込んだのは大陸から日本へ海を渡った僧侶ではないかという説が有力です。

こうして、絶滅しかけたイチョウは再び世界中に広がり、たくさんの人々に認知されることになりました。しかしそれは、あくまで人の手によって植樹されたもの。自生のものは絶滅しているといわれています。それが「野生絶滅種」であり、イチョウが「生きている化石」と呼ばれる理由なのです。

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