森の図書室

森について、木について、
知ってほしいことが、たくさんあります。

誰かに話したくなる小ネタ

世界中のたくさんある国の中でも、幸福度の高い豊かな国と言われているデンマーク。

じつは、今のような豊かな国になれたのは、

木が育たない土地に森をつくった親子がいたからなんだ。

 

それは今より100年以上も前。

戦争に負けたデンマークは、戦争に勝った国に豊かな土地を取られてしまい、残ったのは砂丘と荒れ地ばかり。

多くのデンマーク人が希望を失っているなか、希望を捨てない人がいた。

その名前はダルガス。土木、地質、植物の学者だったダルガスは、

「剣をもって失ったもの」を「鋤(すき)をもって取り返す」ことを決意したんだ。

 

ダルガスは研究の結果、ノルウェー産のモミが荒れ地に適していることを知った。

たしかにノルウェー産のモミは根づいたけれど数年ももたずに枯れてしまう。

ダルガスはあきらめずさらに研究を重ねて、

ノルウェー産のモミの間にアルプス産の小モミを植えることにした。

すると2種類のモミは一緒に育ち始めた。これで森が生まれる。

みんな喜んだけれど、森をよみがえらせるのは簡単ではなかった。

モミは枯れなかったけれど、大きく成長しなかったんだ。

 

時は経ち、研究と挑戦は息子のフレデリック・ダルガスに受け継がれた。

ある日、彼は大きな発見をした。それは2種類のモミは最初は助け合いながら育つけれど、

あるところまで育ったら小モミを伐る必要がある、ということ。

実際に試してみると、残したノルウェー産のモミが大きく育つようになった。

そこから少しずつ森がよみがえり、樹々が海岸からの砂嵐の壁になった。

森ができたことで気候が変わり農作物が育つようになった。

牧場で牛や羊がたわむれ、おいしい乳製品を輸出できるようになった。

ダルガス親子の国への想いと、失敗しても決してあきらめない森づくりへの情熱が、デンマークを今のような豊かな国にしたんだね。

 

 

出典:『後世への最大遺物・デンマルク国の話』内村鑑三 岩波文庫