きこりんと知る
木と森と住まいのサステナビリティ

「地産地消」のメリットはなんだろう。
世界の動きと自分の暮らしをつなげてみる。

2021.02.25

ある地域で生産されたものが同じ地域内で消費されることを「地産地消」と呼ぶようになったのは、1980年代中頃だと言われています。40年近くを経て、地球温暖化や海洋汚染といった課題は気候危機として顕在化し、社会的な状況も変化してきました。そこでいま改めて、地産地消という概念について考えてみたいと思います。

地産地消の良さとは

普段のお買い物の中で、どのくらい「産地」を気にしていますか。流通の発達により、こだわりのコーヒーはブラジル産、スムージーをつくるバナナはフィリピン産、お気に入りのチョコレートは欧州産といったように、遠くから運ばれてきたものも簡単に手に入り、それによって得られる喜びも確実にあります。
しかしそれらの食材ひとつひとつが、どれだけのエネルギーを利用して運ばれているか考えたことはありますか。

そこで地元産の具体的なメリットを、「買う人」「つくる人」「地域社会」という三者の目線で考えてみましょう。
私たちのほとんどが当てはまる「買う人」にとってのメリットは、やはり新鮮な食材が買えることでしょう。鮮度の良さは、食味の良さや栄養価の高さにも繋がります。また、地域の特産品や生産状況を知る機会にもなり、それは暮らしの安心感や信頼関係を育むきっかけにもなります。
また、農家など食べ物を「つくる人」にとっては、近隣地域で消費ニーズが確立することで生産量や効率が上げられたり、流通コストを抑えることに直結します。食べた人の感想や反応を直接聞くことができれば、仕事のやりがいや喜び、前向きな改善の機会にもできるでしょう。

そして、「地域社会」にとっての可能性も様々なことが考えられます。例えば、地域内で需要と供給がともに高まることで地域経済が循環すること、雇用が増えること、住民の幸福度が上がり地域活性につながること、地域の魅力が向上して観光要素にもなること、また、もしも学校給食で地域の農畜産物が使えたら、次世代の食育が促進し地元愛が育まれるなど、中長期的なメリットが考えられるのです。

CO2削減は世界的スタンダードに

一方で世界に目を向けてみると、2015年に採択されたパリ協定によって各国がCO2排出量の削減に動き出しました。食品の輸送には燃料などCO2(二酸化炭素)を排出しますので、環境負荷を抑えるためにも、生産地と消費地は物理的に近い方がいいと考える傾向も一層強くなっています。

食品の「量」と「移動距離」を算出し、輸送食品ごとに環境負荷を数値化した「フードマイレージ」と呼ばれる指標があります。長年、輸入に頼っている日本は、国民ひとり当たりのフードマイレージが先進国のなかでも一際高いという事実がありますが、この問題を解決するには、まず地域での変化がなければ、日本全体で変化を起こすことは容易ではありません。
各国が地球環境のために舵を切っているいま、私たち個人の意識と選択にも、改めて変化が求められていると思うのです。

まずは自分の手が届くところから

とはいえ、食べることは日々のことですので、難しく構えることはありません。食材を選ぶときはまず産地を気にしてみる、新しい視点から食材コーナーを眺めてみるなど、無理のない範囲からで大丈夫です。

例えば、もしも地域の食材を食べてみたいと思ったときに、いつも行くスーパーに地域産コーナーがない場合は、生産者が出店するマルシェなどを利用するのもいいでしょうし、もしくは、いつものスーパーにリクエストすることも良いと思います。
大抵のお店にはユーザーの声を聞く窓口があり、そこに届いた声をきっかけに「地元産コーナーができた」「週末に店頭マルシェが始まった」といった変化を各地で見聞きします。このお店で地域産の野菜が買いたい、という声を届けることは、前述したとおり、みんなにとって嬉しいことに繋がる可能性が十分にあるのです。

また地産地消の大切さは、先人たちの言葉からも知ることができます。
仏教から生まれた「身土不二(しんどふじ)」という言葉は、ひとの身体と暮らす土地はふたつに離れることができない、という意味です。日々の暮らしに地域のものを取り入れて、世界をよりよく変えるアクションを始めてみてはいかがでしょうか。

執筆者紹介

やなぎさわまどか

東日本大震災を機に、都市生活から自然が近い暮らしへシフト。食、農、環境課題をテーマに複数メディアで取材執筆、編集のほか、翻訳などを行う。

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